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資産性を決定づけるのは“立地条件”です

『立地』とは、その物件が位置する場所のことです。不動産は、民法で「土地及びその定着物は、不動産とする」と規定されています。その場所にある不動産は、(当たり前ですが)そこにしかなく、不動産の価値を決める最大の要因は、その『立地』です。

つまり『立地』は、不動産そのものの価値といっていい条件です。『立地』という言葉は、「好立地」というように、利便性の高い場所にある土地のときにも使いますし、「高台に立地」のようにその場所の地形や地盤を表す際にも使用されます。

利便性についての考察は、以前の[住居は駅に近ければ近い方がいいのか?]及び[買物利便性は価格に影響するか?]で触れましたので、ここでは後者の「場所の地形や地盤」について記します。

立地(地形や地盤)のリスク

マンション購入検討理由で「資産を持ちたい・資産として有利だと思ったから」が2015年頃に1番になりました。
 
第25回 新築分譲マンション購入に際しての意識調査 2016年
<最新版>第29回 新築分譲マンション購入に際しての意識調査 2018年

2015年頃に1番になってから、ずっと1番をキープしています。資産性を「価格が上がる可能性が高い、もしくは価値を維持できる可能性が高い」と捉えるなら、“都区内”“駅近”が確実な条件でしょう。ですが、もう一つ、資産性を決定付ける重要な要素があります。それが、『立地(地形や地盤)』です。

地盤の弱い低地にある建物を購入し、大きな地震で建物が損壊したり、大雨により冠水した建物の資産価値など推して知るべしです。

(1)標高
(2)地形(高台、低地、谷地、盛土等)
(3)周辺のボーリング調査の結果
(4)表層地盤の数値
(5)地震ハザードマップ
(6)洪水ハザードマップ

ここでは、これらの項目について判断すべきポイントを記します。

標高

「標高」自体で立地の良い悪いを判定できる訳ではないですが、標高によって分かることもあります。それは、“高台”か“低地”かであったり、周辺の標高を調べることで“谷地”であることも推定できます。坂の途中(傾斜地)なのであれば、擁壁の有無を確認し、“盛土”である可能性も考えます。

この「標高」は、国土地理院が公表してくれている「地理院地図」で簡単に調べられるので、気になる物件を見付けたら、すぐに標高を調べるという癖をつけるといいと思います。

地形(高台、低地、谷地、盛土等)

地形をリスクの低い順に並べると、

高台 < 低地・谷地 < 盛土

となります。高台が最も安全で、盛土のリスクが最も高くなります。多摩の方に行き、丘陵地となりますと、更に安全性が増します。

高台

都区内ですと丘陵地はなく、高台か否かも、武蔵野台地の上か下かという判断になります。一見、標高30m超あり高台立地に見えても、周辺の標高を調べ、周辺を実際に歩くなどすると、昔の川の通り道であった場合もあります。また高台の平坦地と思える場所が「地震ハザードマップ」に[大規模盛土造成地]と表示されていることもあります。高台だと全て安心という訳ではないですが、それでも、低地や谷地に比較したら、高台の方が地震や水害のリスクが小さいです。

低地・谷地

低地や谷地が、高台と比較して、地震及び水害の両面でリスクが高くなる理由は何でしょうか?
(以下では、谷地は低地に含みます。地形的なリスクはほとんど同じだからです。)

まず挙げられるのが「地盤の弱さ」です。ボーリング調査の結果を見ても、特に地表面に近い地層が低地は弱いことが多いです。地層の固さを表す数値に『N値』というのがありますが、それが0~2の地点が目立ちます。マンションの場合は少し変わるのですが、戸建住宅を想定した場合は、N値5以上あれば、地盤改良が必要ないと判断されることが多いです。

地震の際、地盤が柔らかいと、やはり建物は揺れやすいと思います。揺れが大きくなると、建物が損傷・損壊する可能性は高まります。建物が壊れる可能性が高いということは、命の危険というリスクもありますが、倒壊を免れても、壊れた建物は修繕が必要となります。壊れやすい、ということは、修繕費が高くなる可能性が高いということです。

そして次に挙げられるのが「浸水可能性」です。昨今の大雨は、毎年のように想定外という言葉をニュースで聞くように凄まじいものがあります。通常、都内の下水管の排水能力は1時間当たり50㎜までの雨量を想定しています。裏を返せば、1時間当たり50㎜を超えるようなゲリラ豪雨があった場合『内水氾濫』を引き起こす可能性が高いということです。
※内水氾濫:市街地内を流れる下水道などから水が溢れる水害のこと。

浸水した建物は、それが床下だけで済んだとしても、カビが生えたり等の問題が生じる可能性があります。その復旧のための修繕費や消毒費も必要となりますが、浸水履歴のある建物ということになりますと、資産価値も下がるでしょう。

盛土

そして、1番避けたいのが「盛土」です。これは、過去の大地震の全てで、1番大きな被害を出してきました。「崖上マンション(擁壁を設置し盛土をして、その上に建てたマンション)ですが、施工がスーパーゼネコンなので大丈夫ですよね?」と聞かれることがありますが、築浅のうちは大丈夫じゃないですか、と答えています。

まず、盛土は人工的に盛り固めた地盤なので、想定外の地震の揺れがあった場合は耐えられるのか分かりません。擁壁も、築後20年経過するとメンテナンスが必要となることがあるので、少し古くなった擁壁にはリスクを感じます。

そしてこの盛土の上に立つ建物には、上記の揺れやすい土地なので壊れやすいというリスクに加え、擁壁の損壊リスクも加わる訳です。修繕も余計にかかりますし、平時でも、修繕積立金は擁壁のない物件と比較したら高くないとおかしいです。

なので、損壊リスクが高いだけでなく、修繕積立金も高くせざるを得ない盛土の上の建物はお勧めできません。

周辺のボーリング調査の結果

先にも触れましたが、ボーリング調査の結果は地盤を判定する上で重要です。ただ、同じように見える地形でも、少し位置が変わるだけで全然違う結果になることもあるので、本当は、ピンポイントで当該物件の土地を調査したデータが欲しいところです。

ただ、残念ながら、ほとんどの場合は公開されておらず、売主側もデータを持っていないことが普通です。

東京都建設局が公開している「東京の地盤(GIS版)」

購入を検討している物件の近所で、地形に類似性が見られる場所に、このサイトで見ることのできるボーリング調査の結果があれば、それを参考にはできると思います。マンションは、N値30以上の支持層(固い地層)まで杭を打つのが普通なので、地表近くの地盤は関係ないという考え方もありますが、やはり地盤が固い場所の方が、地震の際のそもそもの揺れも小さいと思っています。(2011年東日本大震災の際に近所の人のヒアリングをしての個人的な感触ですが。)

表層地盤の数値

2016年の熊本地震で新・新耐震(2000年基準)を満たした戸建住宅が倒壊したことにより改めて全国の表層地盤が調査されました。

J-SHIS Mapの中の「表層地盤」

「表層地盤」のタブをクリックすることで見ることができます。これを初めてご覧になった方は、関東平野があまり安全ではない場所であることに驚かれます。また、やはり都区部でも東部は地盤も悪いことが分かります。都区部は、高台でもさほどいい数値ではないですが、一見の価値はあると思います。

地震ハザードマップ

「地震ハザードマップ」を公開していない自治体はないといっていいのではないでしょうか。少なくとも、東京近郊でこれがなかったことはありません。この地図では、

□崖・擁壁の位置
□急傾斜地崩壊危険区域
□液状化の可能性がある地域

等を確認します。そして、この崖の上の土地も崖の下の土地も避けた方が無難です。急傾斜地も同様です。液状化が起きるとどうなるのかは、東日本大震災の際の浦安や北海道胆振東部地震の際の札幌市清田区の映像を覚えている方も多いでしょう。

これらの区域に該当している土地は、高台の平坦地と比較した場合に、地震の際の建物の倒壊・損傷リスクが高くなります。

洪水ハザードマップ

床下浸水でも浸水してしまったら、建物の資産性は損なわれるという話は先にした通りですが、このマップには注意する点があります。

同じような地形(低地)なのに、3mの浸水可能性のメッシュの隣りが、0mの浸水可能性となっている場合があることです。

≪新宿区危機管理課でのヒアリング≫
実際には同じような高低差の土地なのに、何故、浸水可能性が3mだったり、0mだったりするのかについて新宿区危機管理課に話を聞いてきました。
これは、それぞれのメッシュごとのポイントでの下水道の排水能力により「内水氾濫」の可能性を判断しており、付近で氾濫が起きた場合の影響は加味されていないとのことです。

このような表示の場所の見方は、「0m」を見て大丈夫と思うのではなく、「3m」の方を見て(かつ標高差や地形をを調べた上で実際に歩いてみて)、リスクを把握することが大切です。そして、その際の判断基準は保守的というか、悪い情報の方を信じるようにします。

結論

「資産性」を求めるならば、利便性と同じくらい、地形や地震・水害でのリスクを重要視するべきです。繰り返しですが、損壊した建物や浸水した建物の資産価値は暴落します。また、マンションの場合、計画していない大規模修繕や建替えが必要となった場合の合意形成は非常に困難です。修繕や建替えの合意形成ができなければ、建物は廃墟と化し、資産価値はマイナスといっていい状態になるかもしれません。

近いうちに大きな地震が起きると言われているからこそ、建物が損壊する可能性の低い立地を選んでいただきたいと思っています。

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『使用貸借』は、評価をするといくらになるのか?

以前、「使用貸借」の評価をしました。親の土地をタダで借りて、そこに賃貸アパートを建てているというケースです。

賃貸アパートの評価は、普通に建物の評価(原価法と収益法)で行いますが、タダで借りている土地の方の評価をどうするかが問題です。

「使用貸借」というのは、地主(親)から「返せ」と言われたら、建物買取請求権さえ認められずに返さないといけない弱い権利です。この権利に価値を認めるか、認めるとしたらどれくらいかという問題です。

まず、「使用貸借」は、原則として相続できませんし、国税庁も価値を認めていません

では、価値はないのかというと、そこに建物を建てることができていて、その建物が存在する限り収益を生む訳ですから、ゼロというのも乱暴に思えます。

では、どれくらいの価値を認めるべきでしょうか。

まず、土地を使用する権利であり、所有権に劣るものとして「借地権」があります。これも、その土地に自分名義の建物を建てて、その収益を得ることのできる権利です。この「借地権」は、建物の登記がされていること等により地主に対して対抗力を持つ強い権利です。
※簡単にするために、色々すっ飛ばしていますが、大筋としてはこんな感じです。

となると、「借地権」と違い地主に対する対抗力を持たない「使用貸借」「借地権」を上回ることは絶対にないということが分かります。

そして、「公共事業の用地買収の使用貸借権に対する補償割合が、借地権価格の1/3」(公共用地の取得に伴う損失補償基準)とされていることを考察しますと、これは、親子でも何でもない人が立ち退きを迫る場合(公共事業)の金額なので、この金額が上限になるのかなと思っています。

では、下限はというと、土地を利用することによる利益(借り得)の下限、つまり固定資産税及び都市計画税の建物の存続期間における合計額の現在価値となると思われます。

その上限及び下限の間で、

▽当該使用貸借が、相続における「特別受益」にあたる程度

▽相続が起きる可能性

等を勘案して「使用貸借の価格」を算定することになると考えています。

この最後の相続関連の“程度”の精緻な査定は困難ですが。

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マンションの前の道路はどんな道路がベストなのか?

少し前に「幹線道路沿いの物件を勧めない理由」を書きましたので、今回は幹線道路以外の道路について書きます。

物件の入口が面している「道路」は、土地や戸建てを購入する場合には、必ず詳しく調べます。「道路」によって、そもそも建物が建てることができなかったり、建てることはできても思うような大きさにできなかったり、私道なんかだと水道を引けなかったりといった重大なリスクが潜んでいるからです。

その点、マンションの場合は、既に建物が建っているので、前面道路を気にする方はほとんどいないと思います。そもそも建替えの難しいマンションでは、その建物があることを前提にするので、上述したようなリスクについては考えなくてもいいと思います。ただ、建物が建たないような重大なリスクはないかもしれませんが、毎日使うことを考えると無視できないリスクは存在します。

マンションは「住む」場所だからこそ、道路にどんな種類があり、どんなリスクがあるのか、安全安心(交通事故の危険性及び犯罪に遭遇する危険性)の観点から見ていきましょう。

道路のリスク

不動産に関わる「道路」で重要なのは「建築基準法上の道路」ですが、ここでは用途などから分類しつつ、道路について分析します。

(1)前面道路の種類(幹線道路、生活道路、私道等)
(2)前面道路の幅員
(3)前面道路の車の通行量
(4)歩道の整備等
(5)駅から物件までの道路環境、街灯の明るさ

≪「建築基準法上の道路」とは、どのような道路か?≫
「建築基準法上の道路」というのは、建物を建築する際に必要とされる道路の要件です。建築基準法上の道路に接していない敷地には、原則として建物を建てることができません。具体的には、建物を建てようとする敷地は、原則4m以上の幅員の道路に2m以上面していなければなりません。ただ、幅員4m未満の道でも建築基準法上の道路とみなされる場合もあるので、詳しくは役所でヒアリングするか、専門家に聞いてください。

前面道路の種類(幹線道路、生活道路、私道等)

道路の種類というと、法律上の分類や管理上の分類等色々ありますが、ここではもっと感覚的に、車の通行量や住民の使用頻度で分類したいと思います。

道路の中で一番広くて車の通行量も多いのは、「幹線道路」です。幹線道路の影響については別のページで触れているので、省略します。

幹線道路ほどではないけれども、それなりに車の通行量があるという道路もあります。この場合、幹線道路が物件に及ぼす影響に近い場合があります。

マンションというのは、「住居」です。住むところであり、夜、静かに安心して眠りたい場所です。その意味では、マンションの前面道路にふさわしいのは「生活道路」だと思います。車の通行に支障があるような狭い道路では、別の不便があるので、道路幅員(道路の幅の広さ)もそこそこ欲しいところです。

つまり、道路幅員が5m~8mで、そのエリアに住んでいる人しか通行しないような静かな生活道路がベストです。

ただ、マンションの敷地が少し奥こまった場所にある場合などで、前面道路が「私道」である場合には注意が必要です。その道路の所有・管理もマンションの管理組合である場合、道路の管理・修繕の費用が、マンションの管理費・修繕積立金に上乗せされる場合があります。つまり、他のマンションより、管理費や修繕積立金が将来的に高くなる可能性があるということです。

前面道路の幅員

前でも少し触れてしまいましたが、前面道路の幅員(道路の幅の広さ)は、広ければ広い方がいい、という訳ではありません。

広い方が、建物を建築する際の制約は少なくなるのですが、系統・連続性の良い広い道路は、どうしても車の通行量が増えます。また、たまに、住宅街になぜか数百mだけ広い道路が存在することがありますが、あれはあれでリスクを感じます。両端が切れているので、車の通行量は少ないですが、知らない車が駐車していてもあまり気にならないことが多いためです。連れ去り等の犯罪の多くが、車を使用していることを考えると、車が駐車しやすい道路というのも考えものです。

また、狭すぎる道路もリスクがあります。一般的に、車がすれ違ったり、緊急車両(救急車や消防車)が通行するのに必要な道路幅員は、最低4mだといわれます。狭い道路が続く路地の奥にある物件の場合、救急車が到着するのに時間が掛かったり、ポンプ車が近くまでこれず、火を消すのに時間が掛かったりするリスクが生じます。

以上から、先にも触れましたが、道路幅員は5m~8mほどがいいのではないかと思っています。10mあったらダメなのか?と言われましたら、全然そんなことはなく、車の通行量、歩道の整備の状態、駐車のしづらさ等を個別に判断することになります。大切なのは、幅員ではなくリスクの少なさです。5m~8mというのは、あくまで生活道路でこれくらいの幅員の道路はいい道路が多かった、というだけの意味です。

前面道路の車の通行量

これも先に触れましたが、車の通行量は非常に重要です。車は、騒音や振動等の原因になるだけでなく、人間(特に子供)にとっては凶器ともなる存在だからです。

エントランス前の道路の車の通行量は、少ないに越したことはありません。騒音等の問題もさることながら、子供というのは、どんなに注意をしていても、必ず飛び出しをやらかすからです。子供から目を離さないようにするのは前提ながら、万が一飛び出してしまっても、車にひかれるリスクが小さい道路をできるなら選びたいものです。特にファミリー層には注意していただきたいポイントです。

歩道の整備等

生活道路の場合は必要ありませんが、少し広い、車も多少走っているような道路ですと、「歩道」がきちんと整備されていることが重要です。

特に、子供が飛び出してしまっても車道には出れないように、エントランス前にはガードレールがあるといいですね。昔、国土交通省の役人さんが話していたことがあるのですが、交通事故が減る一番の施策はガードレールの設置だそうです。少し広い道路で、車の通行量もある道路なら、ガードレースがしっかり守ってくれているか、要チェックです。

駅から物件までの道路環境、街灯の明るさ

ここまでは、物件の前の道路の話をしてきましたが、毎日使う駅から物件までの経路に危険な個所がないかも調べておくべきです。この場合の視点も、安全安心(交通事故の危険性及び犯罪に遭遇する危険性)です。

駅から物件までの経路に、ガードレールがないのに車の通行量の多い道路(抜け道に使われている道路に多い)がないか、安全に渡れる交差点が遠く信号のない横断歩道を渡らなければならない箇所がないか等をチェックします。車の運転者がうっかり事故を起こしても、こちらが気を付けている限り、大きな被害には遭わないような道路を通りたいものです。

また、細く曲がりくねって先が見通せない道路や、知らない車が駐車している道路、街路灯が少なく夜になると暗い道路なども、セキュリティ(犯罪に遭遇する危険性)の観点から避けた方がいいでしょう。

結論

土地や戸建ての場合の道路と異なり、マンションの場合、「道路」で価格が変わるのは幹線道路沿いや狭い路地の場合等であり、前面道路幅員が8mである物件と5mである物件とで、他の条件が一緒なら価格が変わることはほとんどありません。

価格に与える影響は軽微でも、たかが「道路」されど「道路」です。是非、交通事故の危険性及び犯罪に遭遇する危険性の観点からリスクを抜き出し、安全安心な道路・物件を選んでいただきたいと願っております。