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不動産売買契約書は、追加された条項等に注意!03(ひな型を見ながら解説)

前の記事で中古区分マンションの取引に係る不動産売買契約書の「本文(前半)」を簡単に解説しました。
今回は、契約書本文の後半について見ていきますが、引き続き「標準的な契約書」と「個別の契約書」と比較するポイントとしては、以下の3点について注目してください。

標準的な契約書にあって、個別の契約書にない条項等
個別の契約書にあって、標準的な契約書にない条項等
標準的な契約書と同じに見えて、文言が異なっている条項等

これらの“間違い探し”をしながら契約書をチェックしましょう。

不動産売買契約書(本文の後編)

第13条 設備の引渡し

【解説】
 こちらは「設備」についての引渡しについて規定しています。設備とは、システムキッチンやユニットバス、給湯器等を指します。

第2項では、第12条でも触れた小さな不具合と同様に、設備の不具合では「契約解除」はできませんよ、と謳っています。不動産は金額の大きな取引ですから、あまり簡単に契約解除を認めてしまうのも、法的安定性を欠くということです。

なので、事前のチェックは重要となります。売主が居住中で契約前にあまり詳細に確認できなかった場合には、契約書に特約を追加して設備に不具合があった場合の取扱いについて決めておくという手もあります。

[少し横に逸れた話]
築10年前後、またはそれより古い物件の場合、設備の更新についても確認しなくてはいけません。例えば、給湯器の寿命は大体15年くらいといわれており、築15年くらいの物件を買った場合、給湯器が一度も更新されていない状態だと入居後すぐに壊れるということがあり得ます。冬とかだったら新しい給湯器の設置が済むまでしばらくシャワーにも入れない、なんて悲惨なことになりかねません。なので、更新されていなかったら、給湯器の更新代相当の値下げ交渉をするのがいいでしょう。

第14条 手付解除

【解説】《ここ重要!》
 買主が、もっと良いと思える物件を見付けてしまった、若しくは家庭の事情等で買えなくなったなどなど、買主の都合で購入を取り下げたい場合、手付金を放棄すれば契約解除となります。それ以上の費用を請求されることはありません。

というように、契約解除をした場合、手付金を超える支払いを求めないということが明記されていることが必要です。手付金に加え違約金として、等の文言が別にある場合は注意が必要です。

また「相手方の本契約の履行の着手の有無にかかわらず」という部分も重要です。上述のようにこの部分にかかわらず期限までは手付金の放棄で契約解除ができると記載されているならいいのですが、「相手方の履行の着手」があった場合には違約金が必要となっている場合もあります。
#「履行の着手」については長くなるので省略します。興味のある方は調べてください。読んでみると、そんなに難しいことではないです。

この「手付解除」の部分も、トラブルになりがちな条項なので、どのような条件で契約解除できるのかを把握し、万が一、こちらから契約解除をする可能性があるのであれば、なるべく有利な取り決めになるように交渉しましょう。

第15条 修補の遅滞を含む契約違反による解除・違約金

【解説】
 この契約書でいえば、手付解除の期限を過ぎて、かつ「相手方の履行の着手」があったにも関わらず、契約解除を求めた場合や、買主が残代金を支払ったにもかかわらずマンションの部屋の引渡しをしない(売主の家具等の荷物を撤去しない)等の場合に違約金を定めて、履行を促すものです。

第16条 反社会的勢力の排除

【解説】
 いわゆる「反社条項」です。万が一、契約の相手方が、反社会的勢力と関わりがあると判明した場合に、直ちに“無催告で”契約解除できる、ということを定めたものです。

反社会的勢力とのトラブルに巻き込まれることを防ぐための条文なので、少し長ったらしく同じようなことを繰り返しているような感もありますが、存在自体に意味があると思ってください。

第17条 融資利用の特約

【解説】《ここ重要!》
 いわゆる「ローン条項」です。住宅ローンを組んでマンションを購入する場合、この条項はとても重要です。

住宅ローンの本申込みには、この契約書が必要なので「本契約締結後すみやかにその融資の申込み手続をします」と規定しているのですが、この「すみやかに」という部分は、買主側の努力義務を表していると取れます。

つまり、この条項がある場合、売主の法的立場は不安定な状態が継続する訳です。売買契約は済んだものの、買主の住宅ローン審査が通らなかったら、また一から売却活動をやり直さないといけないのですから。なので、買主は「すみやかに」融資の申込み手続きをする必要があります。

また、第2項の「融資の全部または一部」の“一部”も重要な部分です。例えば、5,000万円のローンを申込んで4,200万円しか融資してもらえなかった場合、この“一部”の文言がなければ「あと800万円は買主自身で用意してください」と言われてしまうなんてリスクも生じます。この場合、何とか800万円用意できても、生活プランは狂っちゃいますよね。

第3項も、ほとんどの契約書にあると思いますが、「無利息で返還」「損賠賠償請求は不可」という2点は書かれていることを確認しましょう。

第4項は、買主の気が変わり、当該物件の購入意欲がなくなった場合に、そのまま契約解除を申し入れると手付金の没収や違約金を徴収されるのに対し、住宅ローンが下りなかったという理由なら、手付金も戻りますし違約金の必要もありません。なので、住宅ローンの手続きを怠ったりして金融機関の審査でNO判定を貰おうとする場合があることを牽制するために新たに設けられた条項です。

これを見抜くのは難しいですが、ローン条項に合意する以上、買主にはローンの成立のために通常必要となる努力をする義務があると解されるでしょう。わざとローン審査で弾いてもらおうなんてことはしないようにしましょう。

第18条 敷地権が賃借権の場合の特約

【解説】
 これは敷地権が「借地権」だった場合の条文です。ローン条項とは逆で、売主が「承諾書」を取得できなければ、契約解除となる取り決めです。

第19条 建物の構造耐力上主要な部分等の状況について双方が確認した事項

【解説】
 インスペクションのことです。インスペクションが済んでいる場合には、その調査報告書を交付してもらいましょう。

表紙(表題部)の「インスペクション」の項目でも触れましたが、マンションの場合はインスペクションはあまり大きな意味を持ちません。勿論、実施されることにマイナスはありません。

第20条 印紙の負担区分

【解説】
 多く見られるのは、買主側の契約書に印紙を貼り(印紙代買主負担)、それのコピーを売主に渡すというパターンです。売主は、売ってしまった物件の契約書は保管する以外に使い道はありませんので、コピーで充分という訳です。これなら売主は印紙代の負担はありません。

その場合、この条文は「本契約書1通を作成し、買主がこれを保有し、売主はこの写しを保有する」等の文言に変わります。

第21条 管理規約等

【解説】
 この条文も、至極当たり前のことが書かれており、特にリスクが生じる点はありません。

ただ、管理規約等のマンション内のルールに関しては、契約日の数日前にコピーは貰っておかなくてはなりません。そのマンションに住むとどんなルールに縛られるのかを知らないまま、購入の判断なんて普通できないですよね。

第22条 契約当事者が複数のときの特例

【解説】
 よくあるのは夫婦の共有となっている物件です。「連帯債務」と明記するのは重要です。

また「通知は、複数のうちの一人に到達したときに、その全員に対し効力を生じます」という文言も重要です。代表者だと思われる方に通知をしたのに、他の人から「聞いてないから無効だ!」なんて主張されたらややこしくなるので。

第23条 管轄裁判所に関する合意

【解説】
 売買トラブルが裁判にまで発展した場合の取り決めです。

第24条 規定外事項の協議義務

【解説】
 これも契約書によく書かれている決まり文句です。当たり前のことじゃないか、とお思いでしょうが、何かトラブルが起きた際に、いきなり「裁判だ!」とかってなるのではなく、まずは誠意をもって協議しましょう、ということです。

以上です。

こうやって実際に通して読んでみると、そんなに難しいことは書かれていないですよね。でも、これを契約当日にいきなり目の前に出されて「問題なければ押印をお願いします。」と言われて、「問題あります!」と拒否できる人は少ないと思います。

なので、繰り返しなのですが、契約日の数日前に契約書のひな型を取り寄せ、内容をチェックするとともに、不利なのではないかと思える部分を見付けたら、業者に相談して売主と交渉してもらいましょう。

この「契約サポート機能」も不動産業者の当たり前の業務なので、仲介手数料を買主から取るのであれば、完全に買主の味方として動いてもらいましょう。

次から「重要事項説明書」を解説します。

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不動産売買契約書は、追加された条項等に注意!02(ひな型を見ながら解説)

前の記事で中古区分マンションの取引に係る不動産売買契約書の「表紙(表題部)」を簡単に解説しました。
今回は、契約書の本文について見ていきますが、引き続き「標準的な契約書」と「個別の契約書」と比較するポイントとしては、以下の3点について注目してください。

標準的な契約書にあって、個別の契約書にない条項等
個別の契約書にあって、標準的な契約書にない条項等
標準的な契約書と同じに見えて、文言が異なっている条項等

これらの“間違い探し”をしながら契約書をチェックしましょう。

不動産売買契約書(本文の前編)

第1条 売買の目的物および売買代金

【解説】
第1条は、「この物件をこの金額で売買します。」という確認です。この契約書は、何を目的としたものなのかを最初に明示しています。

第2条 手付金

【解説】
「手付金」についての取り決めです。手付金とは「この物件を購入するという意思を翻すことはありません」という意思表明です。なので、自己都合で購入の意思を翻すと、手付金は没収となります。

売主の方も、手付金を受け取ったら、もう他の人にこの物件を譲ってはいけません。やっぱり別の人に譲る、なんて勝手に売却の意思を翻すと手付金の倍返しをしなくてはなりません。(ただ手付金を返すだけでは、売主のペナルティになりませんからね)
#ここでは一般的な「解約手付」について書いています。

手付金の相場は、売買価格の5%~10%です。感覚的には5%が多いと思いますが、その物件をすごく気に入り、他でも狙っている人がいるかもと不安を覚えるようなら10%以上払ってしまうのもありだと思います(予算が許せば)。手付金が高ければ、それだけ自己都合で解約した場合のペナルティが大きくなるので、契約の履行を強く促せます。

第3条 売買代金の支払いの時期、方法等

【解説】
これも、単にスケジュールの確認です。購入を依頼した仲介業者や住宅ローンを組む金融機関とよく相談して、表題部に記載する支払日を決めましょう。

第4条 売買対象面積

【解説】
区分マンションの場合、購入した後に改めて部屋面積を測量したりしないので、あまり意味のない条文です。
まぁ、一棟の敷地に関して、規約敷地を増減させたり、測量をやり直したら面積が少し変わったということはあるかもしれません。

第5条 所有権の移転の時期

【解説】
代金を全部払ったら所有権を移転します、という至極当たり前のことが書かれています。

第6条 引渡し

【解説】
第3条の残代金支払日と同じ日になります。

第7条 抵当権等の抹消

【解説】《ここ重要!》
これは買主にとっては入れておいてもらわないといけない条文です。通常、この条文がない契約書はあり得ないですが、念のため確認しましょう。

前回、「物件の確定」と「売主の確認」のために登記記録を見ましょうと書きましたが、この条文の通り、購入後の所有権を阻害するような権利が登記されていないかどうかの確認も非常に大切なことです。

登記記録を取った段階で売主の抵当権が残っているのは仕方がないですが、その他の権利が登記されていたら、売主(側業者)に「それは何か」を確認するとともに、それが所有権を阻害するものであれば、引渡日までに抹消してもらうよう要求しましょう。所有権を阻害する権利が抹消されずに残っている物件を、そのまま購入してはいけません。

第8条 所有権等の移転登記等

【解説】
 所有権移転登記に係る登記費用は買主の負担ですよ、という内容です。所有権移転登記は必ず即日にやらなくてはなりません。でないと、二重譲渡のトラブルに巻き込まれる可能性が(稀にですが)出てきてしまいます。そして、その主なリスクは、買った筈なのに所有権を主張できなくなる可能性のある買主側が負います。勿論、売主を詐欺的な行為をしたとして追及できますが、代金が戻ってくるかどうかは分かりません(売主が破産してしまうことだってあり得ますし)。

[少し横に逸れた話]
なので、買主が登記費用を負担した上で、銀行お抱えの司法書士の先生を使わなくていい場合には、買主側が司法書士を用意するのが原則です。先にも触れたように、登記がなされないことに対するリスクは買主の方が大きいので。また、売主の本人確認をしっかりやってもらうという意味でも、司法書士は買主側の先生を使うよう交渉しましょう。

第2項但し書では、例えば、売主の現住所が登記記録記載の住所と異なっている場合、「住所変更登記」が済んでいないと所有権移転登記ができないので、売主は住所変更登記をする必要があります。ただ、それは売主の問題なので、その登記費用は売主が負担してね、という話です。

第9条 引渡し完了前の滅失・損傷

【解説】
 この条文も、ほとんど起きないレアケースを想定した場合のものなのですが、重要です。

この契約を交わした日から引渡日までの間に、例えば、大地震が発生してマンションの建物自体が傾いてしまった場合、「契約したんだから、残金払え!」と言われたら困りますよね。

大地震の場合のようにマンションが住める状態でなくなった場合には、契約解除となり、手付金も買主に返還する旨、定められています。

[少し横に逸れた話]
これ全壊だったら、いっそ清々しいですが、修繕できるレベルだと却ってトラブルになりますよね。例えば、売買対象だったマンションの1階の部屋が台風等の豪雨で床上浸水してしまった場合、躯体などの主要構造部には何の影響もないので内装だけ張り替えます、と言われても嫌じゃありません?

このようなトラブルだって滅多にないことでしょうけれど考え得るリスクではあるので、そもそも低地や谷地の物件は購入対象とするのをやめておきましょう、ということです。

第10条 物件状況等報告書

【解説】
 この条文がなくても「物件状況報告書(告知書)」は買主に交付されるべきものですが、この条文があれば、交付して説明することを強く求めることができます。

第11条 公租公課等の分担

【解説】
 諸費用の分担の取り決めです。基本は、引渡完了日以降は買主の負担ということです。これは納得感ありますよね。その日から買主のものになったのだから、買主が払え、と。

それと、管理費等に滞納があった場合の取り決めも付記されています。滞納がある場合には、その額を売買代金額から控除していいということです。そして、その控除した分の滞納額は、買主の方で管理組合に支払ってください、ということです。なので、買主からしたら、安くなる訳ではない上に、他人(売主)が滞納したのに管理組合に「滞納分です」と払わないといけない手間が増える訳です。

第12条 契約不適合による修補請求

【解説】《ここ重要!》
 ここは何かあった場合に一番トラブルになる部分であり、2020年の4月1日施行の改正された民法でも変更があったポイントです。瑕疵担保責任という欠陥があったら対応するという考え方から、契約不適合責任という「契約での取り決めと異なるから責任を取る」という考え方に変わりました。

この条文は、建物に欠陥があった場合にどのような対応が可能かを定めたものです。この中で一番重要なのは“引渡完了日から3ヶ月以内”と期限が定められていることです。売主が個人で買主も個人というケースですと、大抵このくらいの期限になっていると思います。

また、「次に該当する場合」で「(1)シロアリの害 (2)給排水管の故障」のみ挙げられています。引渡しの前のトラブルで多いのが、契約が済み、いざ住む前に再度家具スペース等の寸法を測りたい等の理由で物件の中を確認した際に小さな不具合を見付けた場合です。

「床に少し浮きが見られる」「トイレのドアを開くとギィッと音がする」等の不具合を見付けた買主さんは、この不具合を直してくれ!と主張することがあります。ただ、売買の対象となっているのは『中古』のマンションですからね。新築ではないのだから、多少の不具合はあるのが普通です。そして、それはリフォーム等で対応することになります。

どうしても小さな不具合も許せないという場合には、契約の前に室内を細かくチェックしなければなりません。そして、契約の際に見付けた不具合の分を安くしてくれ等の交渉を行いましょう。

『中古』を買うということはそんなもんだ、という割り切りも必要です。

[少し横に逸れた話]
契約不適合の対象となっている「給排水管の故障」ですが、給排水管が古くなっていたとしても3ヶ月くらいなら故障などしないで使える可能性の方が高いですよね。で、それから数ヶ月経過したら排水管から水漏れがあって、階下の住民に迷惑をかけた、なんてことがあり得ます。

なので、築古物件の場合には、購入の際に管理組合に「給排水管のトラブルは他の住戸で起きていないですか?」と質問するべきでしょう。また、最近流行のリノベーション・マンションの場合は、給排水管の更新が済んでいるかどうか必ず確認しましょう。昨今、不動産協会に入ってくるクレームで一番くらいに多いのは、リノベーション・マンションの給排水管トラブルだそうです。

少し長くなってしまったので、第13条以降は別稿にします。

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不動産売買契約書は、追加された条項等に注意!01(ひな型を見ながら解説)

気になる不動産を見付け、その不動産に大きなリスクが内在していないことを調査・確認したら、いよいよ『契約』に臨むことになります。
※「不動産に内在するリスク」については、『不動産の教科書』やこのサイトの別の記事をご覧ください。

不動産売買における『契約』の際に、一番気を付けなければならないことは何でしょうか?

それは、「自分にとって不利な条文・項目・特約(以下、条項等)がないこと」を確認することです。

至極当たり前のことを言っていますよね。しかし、不動産売買の現場で、契約書を契約日の数日前に取り寄せて、「不利な条項等」がないかどうかチェックしている購入者はどれくらいいるのでしょう。

私のところに相談にいらっしゃる方々の多くは、もう数日後に契約だというスケジュールでも、契約書や重要事項説明書のひな型を取り寄せておらず、契約日当日にぶっつけ本番で契約書等を見る、という状況でした。

勿論、これは、このお客様の側が悪いのではなく、仲介業者が悪いのです。本来、購入の依頼を受けた業者は、購入のサポートをしなくてはいけない筈です。
※「物件購入の手伝いを頼むべき不動産仲介業者の条件5ポイント」参照。

当然、購入者にとって不利な条項等がないか、専門家としての知見・経験を活かして、契約書等を代わりにチェックするくらいのことはやっていい筈です。そして、不利な項目等を見付けたら、お客様と相談の上で売主と交渉する段取りが必要です。その調整が終わってから「契約書にサイン」ということになるのが普通ではないでしょうか。

不利な項目等がないならないで、契約書のひな型をお客様に見せた上で、「特段不利になるような条項等はありませんでした。」と安心させてあげることが大切だと思うのです。

前置きが長くなりましたが、ここでは、契約書を事前に取り寄せたとして、その契約書のどこをチェックすればいいのかについて書いていきます。

不動産売買契約書をチェックする際の注目点

「不動産売買契約書」を法律の専門家や不動産の専門家でもないのに、不利な条項等がないか見抜くというのは至難の業です。本当は信頼できる不動産の専門家を見付けることができたらいいのですが、それが簡単にできたら、このサイトをご覧になっていないですよね。

「不動産売買契約書」に自分にとって不利な条項等の記載がないか見抜くには、標準的な不動産売買契約書と比較するのが一番簡単です。なぜなら、何もない状態から必要なのに記載されていない条項等や不利なことが書いてある条項等を見抜くのはとても難しいからです。

個別の契約書を標準的な契約書と比較することで、必要なのに抜けている条項等や標準的な契約書とは文言が異なっている等の差異に気付けるのです。「間違い探し」だと思って、楽しんでやって頂くのがいいと思います。

「標準的な契約書」としては、不動産協会が用意しているものが一番使われているという意味でも、標準的なものでしょうから、それを使います。そして、ここからその「標準的な契約書」について、その条項等を説明します。個別の契約書と比較するポイントとしては、以下の3点について注目してください。

標準的な契約書にあって、個別の契約書にない条項等
個別の契約書にあって、標準的な契約書にない条項等
標準的な契約書と同じに見えて、文言が異なっている条項等

1はあまりないケースだと思いますが、あった場合は“要注意”です。標準的な契約書は、通常必要だと思うからそれらの条項等を入れているのですから、個別の契約書にその条項がないというのは、どんな理由・意図があるのかヒアリングしなくてはなりません。

2については、ほとんどの契約で存在します。個々の状況がそれぞれ異なるからです。だとしたら、何が足されて、それがどのような影響があるのかを見抜かなくてはなりません。

3については、言葉尻の差などはどうでもいいのですが、難しく分かりにくく書いてあって、意味が変わっている可能性のある場合に注意が必要です。

特に注意が必要なのは「特約」に書かれている項目です。「特約」には2に当たる項目が書かれていることが多いので、一文一文じっくりと吟味しなくてはなりません。
#以下、中古マンションの取引の際の「売買契約書」について説明します。

標準的な不動産売買契約書

ここでは、公益社団法人全日本不動産協会が用意している区分マンション向け「不動産売買契約書」を使います。
※ 戸建て、土地の場合は、必要な条項等が格段に増えますので、別途ご相談ください。

表紙(表題部)

不動産の表示

表題部に記載されている内容は「不動産の特定」です。「あなたの買おうとしている不動産はこれで間違いないですよね?」ということです。当たり前過ぎて、こんなところよく見ないで飛ばしているよ、というあなた、例えば、ここに記載されている「建物の名称」と「部屋番号」が一致していることを確認しないと、買えない物件(他人物)についてお金を払うことになりかねませんよ。

まぁ、実際にはそんなことをしたら仲介業者が大変なことになりますから、ほとんどないことですが、地面師事件などをニュースで聞いたことがあるのであれば、この表題部もおろそかにしないで一つ一つじっくりとチェックして頂きたいと思います。

ということで、この部分で特に大切なのは、

登記記録表題部の「建物の名称」が、売買対象の部屋番号であることを確認
売主の本人確認

これらを確認するためには、自分でも登記記録を取りましょう。当該物件の家屋番号を売主(側業者)に聞き、法務局で請求します。

売主側業者から登記簿のコピーも貰えると思います。ただ、やはり契約の前に、自分で取って貰いたいと思います。なぜなら、本当の稀にですが、売主(側業者)が細工をしている場合があるためです。(そのため、買主側業者は必ず改めて取得します。)

その登記簿を見て、契約書に記載されている物件が買おうとしている物件と一致していること(登記記録表題部の建物の名称が部屋番号と一致していること)や、甲区(所有権に関する事項)に記載されている所有者の氏名と売主の氏名が一致していることを確認します。

売主の本人確認については、契約当日に、改めて運転免許証等の写真付きの身分証明書の原本を見せてもらった上で、売主の顔や名前を照合することになります。契約前の事前チェックでは、登記簿の確認をすればいいと思います。

売買代金及び支払方法等

この部分には、指値をして交渉した結果の実際の売買代金が記載されている筈です。交渉して妥結した筈なのに、また価格が戻っている、等があったらすぐにクレームを入れましょう。

その下に記載されている内容は、事前に買主側業者と相談している筈です。手付金や内金等につき、日付や金額が話していた内容と相違ないか確認します。(手付金や内金等の意味については、長くなるのでここでは触れません。)

賃借権譲渡承諾の特約に基づく契約解除期日

この項目は、敷地が借地権であった場合に必要となります。この日までに譲渡の承認を地主から貰えなかったら契約解除となる、という取り決めです。

建物の構造耐力上主要な部分等の状況について確認した事項

ここは「インスペクション」についての項目です。「インスペクション」は、構造耐力上主要な部分や雨漏りに関する部分の調査なので、マンションの場合は、あまり大きな意味はないことが多いです。
#これが「中古戸建て」でしたら、インスペクションは“必ず”やるべきです。

特約

ここに書かれていることは、標準的な契約とは異なるものだと思ってもらっていいです。(重要な条項等について、強調するためにここに改めて書く場合もありますが。)
※個別にこんなものがあるというのは羅列すると長くなるので省略します。また、いつか書きます。

売主

事前に取り寄せた場合、この「売主」の欄が空白であることがありますが、上述した通り、売主の氏名はきちんと聞いておきましょう。そして、その売主の氏名が取り寄せた登記記録の所有者の氏名と一致することを確認しましょう。

⇒ 長くなったので、契約書本文については、別ページにします。