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『資産性』に焦点を絞ったマンションの評価

マンション購入検討理由の中で、「資産を持ちたい・資産として有利だと思ったから」が一番多い理由となっています。

第29回 新築分譲マンション購入に際しての意識調査 2018年
https://www.major7.net/contents/trendlabo/research/vol029/

※この辺の前フリの部分は「不動産の教科書 ~不動産鑑定士が教える不動産の正解~」の資産性に関する記事でも触れていますので、そちらもご覧ください。

『資産性』を保てる物件とは、10年後等に売却しようとした場合に購入価格より高く売れる物件のことではありません(高くなる可能性は排除しませんが)。マンションは、築10年と築20年では当然に価格が異なります。建物が古くなるのですから、築年が古くなるにしたがって安くなるのは当たり前です。

この建物の経年劣化による価格下落という自然な要因“以外”は、価値を維持できる可能性の高い物件のことです。そういうマンションを選べば、マーケットの変動によっては、結果、売却価格が購入価格より高くなる可能性もあると思っています。

『資産性』を保てる物件とは、改めて言えば、10年後や20年後に売却しようとした場合に、できるだけ高く売れる物件のことです。くどいですが、建物の経年劣化分の価格下落に止まる物件です。

しかし、不動産価格に影響を与える要因は多岐に渡ります。これらの要因の中から、『資産性』に大きく影響すると思われるものについて見ていきましょう。

現在のマーケットの状況

不動産の価格が上下するのは、不動産も金融商品と同じように景気のサイクルに左右されるためです。景気が良い時は不動産価格は高くなり、景気が悪い時は不動産価格は安くなります。

では、現在の不動産マーケットの状況は、どんなデータを見ればいいのかというと、

現在の不動産価格は高いのか、過去からの推移をみる。
不動産価格指数(住宅)」国土交通省
「不動産価格の動向を把握するため、国際的に共通のルールに則った指標の作成を目的」として、国土交通省がまとめたものです。単純に、現在の不動産価格は高いのか(ここ数年でどれくらい上昇したのか)?、上昇が続きそうか?を数字で示してくれます。

“利回り”から、不動産マーケットの状況を把握する。
→「不動産投資家調査一般財団法人 日本不動産研究所
不動産というのは、マーケットが過熱しているかどうかを利回りで判断できます。大抵の場合、価格の上昇に賃料の上昇が追い付かず、マーケットが過熱すると利回りは下がります。ファミリー向け一棟賃貸物件の期待利回りが4.5%を切る状況だと過熱気味と言えると思います。
※リスクフリーレートである10年物国債金利との差がどれくらいあるのかも大きな判断材料なのですが、保有・管理することに手間やリスクが生じる不動産(ここでは居住用)では、期待利回りが5%を切ったら過熱を疑い、4.5%を切ったら過熱してきたと判断してもいいと思います。

“年収倍率”で、エンドユーザー(一般消費者)の購買意欲(需要)を測る。
→「年収倍率(株)東京カンテイ
年収倍率とは、年収の何倍で物件が買えるかを表すものです。この倍率が大きくなると、物件を買える人が少なくなり、不動産マーケットに翳りが生じます。目安としては、年収倍率が10倍を超えている場合は、マーケットが過熱気味だと判断できると思います。

等々により、不動産のマーケット・サイクルが現在はどのような状況なのかを判断します。上に挙げたサイト以外にも、参考になる情報はあるので、色々見てみてください。

“利回り”と“年収倍率”については、「不動産の教科書」でも解説していますので、そちらも参考になさってください。

災害による損傷確率

大きな地震が発生し、建物が一部でも損傷した場合、当然ですが、修繕をすることとなります。倒壊を免れても、損傷の度合いに応じて修繕費は必要となります。この損傷の程度が、他のマンションと比較して、同程度なのか、劣るのかは大きな問題です。

以前も触れたように建物の損壊は資産性を毀損することに直結するので、損傷のリスクの程度が高いマンションは、将来必要となる費用を多く見積もる必要があり、現在時点での査定としても安く評価されないといけません。

ただし、この将来に起こる損傷のリスクを正確に見積もることは不可能です。以前の記事で触れた以下の項目ごとに大まかにリスクを積み上げていくことになります。
築年:旧耐震ではないか。新耐震でも築年が古いものは、管理が行き届いているか。
形状:極端に縦に細い形状ではないか。
施工会社:特記する場合を除いて、施工会社でリスク判断をすることはないです。
観察減価:ヒビなどを放っておいていないか等。
性能評価書:性能評価書がある物件の方が安心。
等を積み上げ、総合的に判断します。

ブランド(街)

よく「住みたい街ランキング」というのがありますが、ああいったアンケートで出てくる街は時の移ろいにより人気が上下しますので、あまり気にしなくてもいいと思っています。

街の『ブランド』という定義は、
閑静な住宅街である。
敷地の広い家が並んでいる。
長い期間、住民がプライドを持って街(住環境)を守ってきた歴史がある。
「あそこに住んでみたい」と皆が憧れる場所である。
等の条件を満たすエリアだと思っています。

具体的には、番町、麻布、松濤、城南五山、大和郷、大山町などです。田園調布や成城もこの分類に入ると思います。

ただ将来的には、街がブランドを維持するには、利便性を抜きにしては語れなくなるでしょう。そういう観点から、最近ブランドが強化されている街として、港区の青山・赤坂・白金、渋谷区の広尾・代官山等を挙げることができます。逆に、この利便性の観点から、田園調布や成城は、昔ほどのブランドを発揮できなくなる可能性があると思っています。

『ブランド』の定義の最後の項目である「憧れ」に占める利便性の割合は今後も高くなっていくと予想されます。それに対して、3番目の項目である「住民が守ってきた環境」という側面は比較的重視されなくなると予想しています。
※私個人的には、この3番目の項目は非常に重要だと思っていますが、今後のブランド街の趨勢は、3番目の項目の比率が下がり、最後の項目(の中の利便性)の比率が上がるという傾向を示すと予想しています。

山手線内側の武蔵野台地上にあり、上述の条件のうち3番目の項目は難しいとしても、他の項目をほぼ満たすようなエリアはすべて『ブランド街』に準じると考えても間違いではないと思っています。(嫌悪施設が近所にあるエリアは除きますが)

山手線内側でなくても、複数路線が乗り入れていて、都心部へのアクセスに優れる駅付近で、上述の条件をほぼ満たす高台エリアは『ブランド街』に準じると判断してもいいでしょう。

ブランド(分譲会社)

マンションには分譲会社によって『ブランド』があります。その中で大手の『ブランド』を冠したマンションを『ブランドマンション』と呼び、売買価格も高くなる傾向があります。

『ブランドマンション』って、何なのでしょうか? 少しくらい高くても『ブランドマンション』を購入する方がいいのでしょうか?

繰り返しますが、『ブランドマンション』というのは、大手のデベロッパーが分譲したマンションです。大手が分譲するということの、消費者にとってのメリットは、

イメージがいい。名前が通っている。
→ほとんどの人は、有名なものの方が安心感を覚えます。ブランドマンションは、買うときは高くつきますが、売るときも高く売れる可能性が高いと考えます。
施工監理がしっかりしている。
→大手デベロッパーは、いくつものマンションを手掛けているので、施工監理についてもノウハウが社内に蓄積されている筈だと考えます。
大きな瑕疵があった場合に建て替えてもらえる。(保険的機能)
→少し前に基礎抗が支持層(固い地盤)に届いていないために建物が傾き、全棟建替えとなった大手デベロッパーの物件があったのをご記憶されている方も多いのではないでしょうか。片や、2005年に耐震強度偽装問題を起こしたヒューザーは破産し、住民たちはローンの2重払いなどに苦しみました。建物を見て、その内在するリスクを見抜くのはプロでも難しいので、竣工後数年経過してから問題が顕在化したときに、建替えてもらえる体力のある会社がデベロッパーだといことは、ある種の保険的な意味合いで、多少の価格上乗せもやむを得ないかと思います。

等が挙げられます。

≪保険的機能≫
大手デベロッパーが全棟を建替えてくれたという話に触れましたが、この問題が顕在化した当初は全く取り合ってくれなかったそうです。住民が指摘しても、「うちに責任はない」と門前払いだったようです。
マスコミが取り上げるようになって、ようやく重い腰を上げてくれたようですが、経過はどうあれ、全棟建替えが可能な体力がある会社がデベロッパーでよかったと住民も思っていると思います。

これらに対して、『ブランドマンション』であることの消費者のデメリットは、特にありません。価格が少し高くなる傾向があるというくらいです。ただ、それも上述した保険的機能に対する費用(保険料的なもの)と考えれば、さほど割高感はなくなるでしょう。

ただ、耐震偽装問題を受けた2007年の建築基準法改正(構造計算適合性判定制度の導入等)により、建築確認・検査が厳格化されたため、大手だろうが何だろうが、施工された建物自体に差はさほど認められなくなりました。また、2009年10月1日以降に引渡しされる新築住宅から「住宅瑕疵担保履行法」が適用され、大手でなくても新築後10年間の瑕疵担保責任の履行が保証されました。簡単に言うと、事業者が倒産しても、保証機関が代行してくれるようになりまいた。

なので、2009年10月1日以降に竣工した建物であれば、大手であってもなくても実質的にはあまり変わらないと思っています。

階層、方位、間取り等

「資産性」は、売ろうと思ったときに、比較的売れやすいこと(流動性)が必要です。その売れやすさを左右するマンション固有の要素として、階層、方位、間取り等があります。

階層
部屋が何階にあるのか、です。「不動産の教科書」の方でも書いた話ですが、4階以上になるとバルコニーや窓からの侵入が少なくなります。防犯面からは、4階以上に住むことをお勧めします。3階も外部侵入のリスクは比較的小さく、流動性の観点からも3階以上の方が売れやすいです。

このような観点もありますので、1階や2階の部屋は比較的売れ残りやすいです。

方位
方位については、特に話すことがありません。皆さんがお考えの通りです。南向きの部屋が一番人気で、南東向きや南西向きもさほどマイナスにはなりません。それ以外の人気の順番は、東向き > 西向き > 北向き となります。

ここは、保有物件の売却を考えたときに売れやすい条件を考えるコーナーなので、それぞれの方位の良さみたいなことは省略します。売れやすいのは、南向き(南東、南西含む)の部屋です。

間取り
間取りは、人によって好みがあるので、一概に良い悪いと判定しにくいのですが、一部の人に敬遠される間取りというのは存在します。

部屋の壁の一つが斜めになっている。
→家具の配置等が制約される。
デッドスペースがある。
→部屋の中に大きな柱が出っ張っていて、柱と壁の間の使い方が制約される(実質的に使える部屋のスペースが狭くなる)。
行灯部屋(窓のない部屋)
→単純に、明るい部屋の方がいいと考える人が多い。
天井高が低い。
→圧迫感がある。リフォームの際に融通が利きづらい。

などのマイナス要素のない間取りが売れやすいです。「リビングイン」とか「アイランドキッチン」などの流行はありますが、まずはマイナス要素がない部屋の方が「資産性」は保ちやすいといえます。

権利形態(所有権、借地権等)等融資の制約

マンションを購入しても、その敷地部分は共有であり、建物もその一部分(部屋の部分)の内側を保有しているに過ぎず、建物が耐用年数を迎えたら建替え等の方策を他の住民と協議しなくてはなりません。

建替えが難しいのであれば、耐用年数を迎える前に売却を検討する必要があります。マンションに一定期間しか住まないのであれば、権利形態が所有権だろうが借地権だろうが関係ないという考え方もあると思います。建物の存続期間に差はないので。

ただ、融資を考えると、景色が変わります。以前に書いた「定期借地権マンション」は嫌ですか?という記事をご覧いただきたいのですが、やはり借地権マンションは、価格を下げないと売却は難しいです。

また、権利形態は所有権でも旧耐震であったりすると、建物の状況によっては融資が制限される場合があります。

既述したリスクによる影響

「資産性」を保てる可能性の高い物件とは、要するに総合力の高い物件なので、今まで述べてきた立地や住環境、建物の性能等すべてが関わってきます。

なので、この項目は、各項目の評価を「資産性」というフィルターを通してみるだけになります。特に新しい視点はありません。悪しからず。

結論

「資産性」を求めるならば、結局は「総合的に良い物件」を選ばなくてはなりません。人生で一番の高い買い物をするのですから、しっかり勉強もしていただきたいと思います。

但し、不動産の勉強で盲点となりがちなのが、不動産の本として流通しているものの多くが、個人の経験談だったりすることです。それはそれで非常に勉強になりますが、芯の通った体系的な学習とは、やはり異なります。

住居を選ぶときは、投資用不動産を選ぶときと異なり、「家族の命と財産を守ること」を第一義とするべきです。「資産性」というのは、後からついてくるものです。

利便性やブランド等に惑わされず、不動産を選ぶときに本来考えなくてはいけないことを大切にして、良い物件を選んでいただきたいと願っています。