不動産売買契約サポート

不動産取引における重要事項説明書に記載のある法令(2~20)

この項では、(財)全日本不動産協会が作成している「重要事項説明書」に記載のある「都市計画法、建築基準法以外の法令に基づく制限」の土地区画整理法以外の法律についての説明その1です。

「区画整理法」については(というほど詳しく説明していませんが)、こちら。
「都市計画法、建築基準法以外の法令に基づく制限その2(法令21~40)」はこちら。
「都市計画法、建築基準法以外の法令に基づく制限その3(法令41~58)」はこちら。

 

【注意点1】以下の説明では、法令の大まかなイメージを掴んでもらうことを目的に、正確性よりも「分かり易さ」を優先しています。法令の正確な内容については、改めて調べてください。

【注意点2】不動産取引の目的としては東京都区部にある「中古マンション」の売買を想定しています。都区部以外や土地や戸建ての場合には、更に掘り下げる必要のある法令もあるので、お問い合わせください。

【注意点3】建築に規制をかける法令に関しては「中古マンションの取引にはほとんど関係ありません。」と記載していますが、再建築を視野に入れるほどの築古物件の場合には、土地取引と同等の説明が必要です。

2.古都保存法

日本の古都における「歴史的風土」を保存することを目的とした法律です。この古都には関西の京都市、奈良市等の8市村や神奈川県の鎌倉市、逗子市の計10都市が指定されています。(東京都区部は関係ありません。)
[古都保存法のパンフレット] https://www.mlit.go.jp/common/000221199.pdf

3.都市緑地法

都市における緑地の保全や緑化の推進に関し必要なことを定めた法律です。簡単に端折ると、都市が全く緑のないコンクリート・ジャングルにならないように、公園等の緑を保全するとともに、大規模開発の際に一定量の緑地を残すことを求めたりします。

「緑化地域」に指定されているエリアで、1,000㎡以上の敷地に建物を建てようとする場合は、定められた緑化率を守る必要があります。

以上のような建築を制限する法令です。個人宅の宅地や、中古マンションなどの取引の際は、ほとんど関係ありません。

4.生産緑地法

都市部に残存する農地の計画的な保全を図る法律です。市街化区域で周辺が宅地化された都市部の農家が「畑なのに宅地と同様の固定資産税は払いたくないよ。」と言うので、「きちんと農家をやるなら固定資産税を農地扱いに据え置くよ。」と約束した制度です。

元々「市街化区域」という、文字通り市街化を推進する区域にある農地なので、あくまで特別扱いだよ、と期限が30年と定められました。30年後には宅地扱いにするからね、と。

この生産緑地法が適用されたのが1992年度からであり、ここで指定された生産緑地が約束(指定)から30年後の2022年に大量に“宅地”として供給されるのではないかという恐れが「生産緑地の2022年問題」です。

以上の通り、不動産マーケットには影響が懸念されていますが、中古マンションの売買契約においては、ほとんど関係ありません。

5.特定空港周辺特別措置法

正式名は「特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法」です。名前の通り、特定空港の周辺の航空機の著しい騒音が及ぶこととなる地域に、建物を建てる場合は防音をしっかりすることや、学校・大きな病院・住宅等の建築禁止などが定められいます。

「中古マンション」の取引で、この特別措置法の指定された土地だったら大問題ですが、上述の通り建築を制限する法律なので、実際にはほとんど関係ありません。

6.景観法

以前は、自分の土地に建物を建てるのは個人(法人)の勝手だろ、とばかりに好き勝手をする輩がいて、景観が損なわれるような事態が生じたもので「規制しよう」となったものです。

なので、これも建築を制限する法律です。この法律により「景観計画区域」等に指定されたエリアは珍しくないですが、「中古マンション」は、建築する際にこの規制をクリアした筈なので、取引の際はほとんど関係ありません。

7.大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法

東京都区部などの既成市街地が対象の土地区画整理事業の兄弟のような法律です。不接道や不整形、狭小地等の建築に制限のある土地を集約することで、マンション等の共同住宅を建築することを目的とすることも可能とするための施策です。

これも、マンションを建築する前に適用される法律なので、「中古マンション」の取引の際はほとんど関係ありません。

8.地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律

地方にも人や仕事を分散させるために、地方に活力と魅力ある地域づくりを進めるための法律です。東京都区部エリアの不動産取引の際は関係ありません。

9.被災市街地復興特別措置法

大規模な災害を受けた市街地の復興を推進するための法律です。首都直下地震等が発生したら、東京都区部も当該法の指定を受ける可能性がありますが、現時点での不動産取引の際は関係ありません。

10.新住宅市街地開発法

住宅に対する需要が著しく多い地域において良好な住宅市街地の開発を推進するための法律です。多摩ニュータウン、千葉ニュータウン等の大都市圏の近郊に大規模な住宅市街地を建設するため事業です。

これも、東京都区部の「中古マンション」の取引の際は関係ありません。

11.新都市基盤整備法

大都市の周辺に新都市を整備する必要がある場合の法律です。大都市における人口集中と宅地需要等の緩和が目的なのですが、現時点で施行された事例はありません。

12.旧市街地改造法(旧防災建築街区造成法において準用する場合に限る。)

1969年の都市再開発法の制定に伴い廃止された法律なのですが、廃止される前に施行されていた防災建築街区造成事業については効力が残っているので、重説のリストにも名称が残っています。

これも「中古マンション」の取引の場合は、ほぼ関係ありません。

13.首都圏の近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する法律

首都圏の近郊で工業団地造成事業の予定地を定め造成された製造工場等の敷地に制限を掛ける法律ですが、東京都区部は「既成市街地」にあたり当該法の対象となる区域はありません。

14.近畿圏の近郊整備区域及び都市開発区域の整備及び開発に関する法律

13番の法律の近畿版です。東京都区部の不動産取引の際は関係ありません。

15.流通業務市街地整備法

流通機能の向上と道路交通の円滑化を図るために、流通業務施設(トラックターミナル、貨物駅、倉庫など)を整備するための法律です。

東京都区部にも4ヶ所該当する流通業務団地がありますが、「中古マンション」の取引の際はほとんど関係ありません。

16.都市再開発法

東京都区部でもあちこちで再開発が行われていますが、その実施の裏付けとなる法律です。

当該法により、市街地内の老朽木造建築物が密集している地区等において、細分化された敷地の統合、不燃化された共同建築物の建築、公園、広場、街路等の公共施設の整備等を行うことにより、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図っています。

これも建物を建てるときに関わる法律なので、「中古マンション」の取引の際に当該区域だからといって問題となることはありません。

17.沿道整備法

沿道整備道路に指定された幹線道路沿いで、まちづくりのルールである「沿道地区計画」や「建築物の制限に関する条例」が定められると、建物の防音工事や沿道に緩衝建築物を建てる場合に、助成金や負担金を受けることができるという法令です。

既存の住宅も対象となる場合があるので、当該法の適用区域内にあるマンションを取引する際には、当該法の説明をよく受けましょう。

18.集落地域整備法

農業振興地域内にある、都市化が進み、農家と一般住宅が混在する都市近郊の農村集落について、調和のとれた地域整備を行うための法律です。

市街化区域以外であることも要件の一つなので、東京都区部では適用されるエリアはありません。

19.密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律

いわゆる木密(木造住宅密集地域)の改善を目指したものです。ひとたび大地震等が発生すると、狭い路地に木造住宅が密集している地域は大火災を発生させる危険性が高いため、「空地の確保」「防災上有効な道路の整備」「建築物の耐震不燃化」等を推進して、最低限の安全性を確保しようとする法律です。

東京都区部でも実施されている「防災街区整備事業」は、当該法に基づき、密集市街地の防災機能の確保と土地の合理的かつ健全な利用を図るため、老朽化した建築物を除去し、防災機能を備えた建築物および公共施設の整備を行う事業です。

この対象地であっても事業が完了していれば、不動産取引の際に支障となることはありません。

20.地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律

歴史的風致の維持向上と良好な市街地の形成を両立させるための法律です。これに基づく「歴史的風致維持向上地区計画」区域内では、建築の際などに制約を受ける。

これも建物を建てるときに関わる法律なので、「中古マンション」の取引の際に当該区域だからといって問題となることはありません。

【横に逸れた話】
長くなったので21の法律以降は、別ページにします。

ここまで見てきたように、これだけ沢山の法律が羅列されていながら、東京都区部の「中古マンション」(既存建物)の取引の際には、ほとんど影響を与えない法律が多いのです。

このだらだらと列挙する表記方法には、却ってマイナスの効果があると思っています。

重要事項説明書を宅建士が説明する際の一番の問題点は、ただ書いてあることを読み上げるだけであり、実際にはリスク等がある場合でも、その内容を詳しく説明するに至っていない、というところにあります

このリストは、漏れがないようにという配慮なのかもしれませんが、この中に重要な法律が混ざっていても、他の法律に埋もれてしまい、現在の取引(契約)において何が重要な法律で何がいらない法律なのかが、却って見えにくくなっていると感じています。

少なくとも、このリストの下部分の空白に「本物件に関係する法律の詳細な説明」という見出しが必要だと思います。

お客様が色々な法律に目移りしている間に、「こちらの法律は該当します。」とだけ触れてお終い、なんて重要事項説明が目に浮かびます。