リスクの深掘り記事

資産性を決定づけるのは“立地条件”です

『立地』とは、その物件が位置する場所のことです。不動産は、民法で「土地及びその定着物は、不動産とする」と規定されています。その場所にある不動産は、(当たり前ですが)そこにしかなく、不動産の価値を決める最大の要因は、その『立地』です。

つまり『立地』は、不動産そのものの価値といっていい条件です。『立地』という言葉は、「好立地」というように、利便性の高い場所にある土地のときにも使いますし、「高台に立地」のようにその場所の地形や地盤を表す際にも使用されます。

利便性についての考察は、以前の[住居は駅に近ければ近い方がいいのか?]及び[買物利便性は価格に影響するか?]で触れましたので、ここでは後者の「場所の地形や地盤」について記します。

立地(地形や地盤)のリスク

マンション購入検討理由で「資産を持ちたい・資産として有利だと思ったから」が2015年頃に1番になりました。
 

2015年頃に1番になってから、ずっと1番をキープしています。資産性を「価格が上がる可能性が高い、もしくは価値を維持できる可能性が高い」と捉えるなら、“都区内”“駅近”が確実な条件でしょう。ですが、もう一つ、資産性を決定付ける重要な要素があります。それが、『立地(地形や地盤)』です。

地盤の弱い低地にある建物を購入し、大きな地震で建物が損壊したり、大雨により冠水した建物の資産価値など推して知るべしです。

(1)標高
(2)地形(高台、低地、谷地、盛土等)
(3)周辺のボーリング調査の結果
(4)表層地盤の数値
(5)地震ハザードマップ
(6)洪水ハザードマップ

ここでは、これらの項目について判断すべきポイントを記します。

標高

「標高」自体で立地の良い悪いを判定できる訳ではないですが、標高によって分かることもあります。それは、“高台”か“低地”かであったり、周辺の標高を調べることで“谷地”であることも推定できます。坂の途中(傾斜地)なのであれば、擁壁の有無を確認し、“盛土”である可能性も考えます。

この「標高」は、国土地理院が公表してくれている「地理院地図」で簡単に調べられるので、気になる物件を見付けたら、すぐに標高を調べるという癖をつけるといいと思います。

地形(高台、低地、谷地、盛土等)

地形をリスクの低い順に並べると、

高台 < 低地・谷地 < 盛土

となります。高台が最も安全で、盛土のリスクが最も高くなります。多摩の方に行き、丘陵地となりますと、更に安全性が増します。

高台

都区内ですと丘陵地はなく、高台か否かも、武蔵野台地の上か下かという判断になります。一見、標高30m超あり高台立地に見えても、周辺の標高を調べ、周辺を実際に歩くなどすると、昔の川の通り道であった場合もあります。また高台の平坦地と思える場所が「地震ハザードマップ」に[大規模盛土造成地]と表示されていることもあります。高台だと全て安心という訳ではないですが、それでも、低地や谷地に比較したら、高台の方が地震や水害のリスクが小さいです。

低地・谷地

低地や谷地が、高台と比較して、地震及び水害の両面でリスクが高くなる理由は何でしょうか?
(以下では、谷地は低地に含みます。地形的なリスクはほとんど同じだからです。)

まず挙げられるのが「地盤の弱さ」です。ボーリング調査の結果を見ても、特に地表面に近い地層が低地は弱いことが多いです。地層の固さを表す数値に『N値』というのがありますが、それが0~2の地点が目立ちます。マンションの場合は少し変わるのですが、戸建住宅を想定した場合は、N値5以上あれば、地盤改良が必要ないと判断されることが多いです。

地震の際、地盤が柔らかいと、やはり建物は揺れやすいと思います。揺れが大きくなると、建物が損傷・損壊する可能性は高まります。建物が壊れる可能性が高いということは、命の危険というリスクもありますが、倒壊を免れても、壊れた建物は修繕が必要となります。壊れやすい、ということは、修繕費が高くなる可能性が高いということです。

そして次に挙げられるのが「浸水可能性」です。昨今の大雨は、毎年のように想定外という言葉をニュースで聞くように凄まじいものがあります。通常、都内の下水管の排水能力は1時間当たり50㎜までの雨量を想定しています。裏を返せば、1時間当たり50㎜を超えるようなゲリラ豪雨があった場合『内水氾濫』を引き起こす可能性が高いということです。
※内水氾濫:市街地内を流れる下水道などから水が溢れる水害のこと。

浸水した建物は、それが床下だけで済んだとしても、カビが生えたり等の問題が生じる可能性があります。その復旧のための修繕費や消毒費も必要となりますが、浸水履歴のある建物ということになりますと、資産価値も下がるでしょう。

盛土

そして、1番避けたいのが「盛土」です。これは、過去の大地震の全てで、1番大きな被害を出してきました。「崖上マンション(擁壁を設置し盛土をして、その上に建てたマンション)ですが、施工がスーパーゼネコンなので大丈夫ですよね?」と聞かれることがありますが、築浅のうちは大丈夫じゃないですか、と答えています。

まず、盛土は人工的に盛り固めた地盤なので、想定外の地震の揺れがあった場合は耐えられるのか分かりません。擁壁も、築後20年経過するとメンテナンスが必要となることがあるので、少し古くなった擁壁にはリスクを感じます。

そしてこの盛土の上に立つ建物には、上記の揺れやすい土地なので壊れやすいというリスクに加え、擁壁の損壊リスクも加わる訳です。修繕も余計にかかりますし、平時でも、修繕積立金は擁壁のない物件と比較したら高くないとおかしいです。

なので、損壊リスクが高いだけでなく、修繕積立金も高くせざるを得ない盛土の上の建物はお勧めできません。

周辺のボーリング調査の結果

先にも触れましたが、ボーリング調査の結果は地盤を判定する上で重要です。ただ、同じように見える地形でも、少し位置が変わるだけで全然違う結果になることもあるので、本当は、ピンポイントで当該物件の土地を調査したデータが欲しいところです。

ただ、残念ながら、ほとんどの場合は公開されておらず、売主側もデータを持っていないことが普通です。

東京都建設局が公開している「東京の地盤(GIS版)」

購入を検討している物件の近所で、地形に類似性が見られる場所に、このサイトで見ることのできるボーリング調査の結果があれば、それを参考にはできると思います。マンションは、N値30以上の支持層(固い地層)まで杭を打つのが普通なので、地表近くの地盤は関係ないという考え方もありますが、やはり地盤が固い場所の方が、地震の際のそもそもの揺れも小さいと思っています。(2011年東日本大震災の際に近所の人のヒアリングをしての個人的な感触ですが。)

表層地盤の数値

2016年の熊本地震で新・新耐震(2000年基準)を満たした戸建住宅が倒壊したことにより改めて全国の表層地盤が調査されました。

J-SHIS Mapの中の「表層地盤」

「表層地盤」のタブをクリックすることで見ることができます。これを初めてご覧になった方は、関東平野があまり安全ではない場所であることに驚かれます。また、やはり都区部でも東部は地盤も悪いことが分かります。都区部は、高台でもさほどいい数値ではないですが、一見の価値はあると思います。

地震ハザードマップ

「地震ハザードマップ」を公開していない自治体はないといっていいのではないでしょうか。少なくとも、東京近郊でこれがなかったことはありません。この地図では、

□崖・擁壁の位置
□急傾斜地崩壊危険区域
□液状化の可能性がある地域

等を確認します。そして、この崖の上の土地も崖の下の土地も避けた方が無難です。急傾斜地も同様です。液状化が起きるとどうなるのかは、東日本大震災の際の浦安や北海道胆振東部地震の際の札幌市清田区の映像を覚えている方も多いでしょう。

これらの区域に該当している土地は、高台の平坦地と比較した場合に、地震の際の建物の倒壊・損傷リスクが高くなります。

洪水ハザードマップ

床下浸水でも浸水してしまったら、建物の資産性は損なわれるという話は先にした通りですが、このマップには注意する点があります。

同じような地形(低地)なのに、3mの浸水可能性のメッシュの隣りが、0mの浸水可能性となっている場合があることです。

≪新宿区危機管理課でのヒアリング≫
実際には同じような高低差の土地なのに、何故、浸水可能性が3mだったり、0mだったりするのかについて新宿区危機管理課に話を聞いてきました。
これは、それぞれのメッシュごとのポイントでの下水道の排水能力により「内水氾濫」の可能性を判断しており、付近で氾濫が起きた場合の影響は加味されていないとのことです。

このような表示の場所の見方は、「0m」を見て大丈夫と思うのではなく、「3m」の方を見て(かつ標高差や地形をを調べた上で実際に歩いてみて)、リスクを把握することが大切です。そして、その際の判断基準は保守的というか、悪い情報の方を信じるようにします。

結論

「資産性」を求めるならば、利便性と同じくらい、地形や地震・水害でのリスクを重要視するべきです。繰り返しですが、損壊した建物や浸水した建物の資産価値は暴落します。また、マンションの場合、計画していない大規模修繕や建替えが必要となった場合の合意形成は非常に困難です。修繕や建替えの合意形成ができなければ、建物は廃墟と化し、資産価値はマイナスといっていい状態になるかもしれません。

近いうちに大きな地震が起きると言われているからこそ、建物が損壊する可能性の低い立地を選んでいただきたいと思っています。